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§ナガイモのマルチ栽培におけるスーパーNKロングの施用効果
十勝農業試験場 てん菜畑作園芸科
研究員 西田 忠志
§我国の稲作施肥の変遷(4)
-昭和初期-
ホクレン農業協同組合連合会(JAグループ)
管理本部 役員室
農学博士 関矢 信一郎
§8月咲き小ギクの開花期予測
石川県農業総合研究センター 育種栽培部
花き科長 西山 哲
石川県農林水産部 農産課 普及研究係
主任技師 吉住 隆司
(前 石川県農業総合研究センター 育種栽培部 花き科)
十勝農業試験場 てん菜畑作園芸科
研究員 西田 忠志
北海道のナガイモ栽培におけるマルチ資材の使用は,5~6月の低温時における地温の確保をおもな目的としており,特に北海道の東部及び北部地域においては,高収量を上げるための栽培技術として不可欠なものである。しかし,使用するマルチの種類やマルチ栽培下での適正な栽植密度・施肥量・施肥法といった栽培技術についてはまだ充分な研究成果が確立されていない。特に施肥に関しては十勝管内のナガイモ産地における火山性圃場での平均的な窒素施肥量は約27kg/10aであるが,収穫時の吸収量は10kg/10aにも満たないことが多く,施肥窒素利用率は40%を下回っている。
現在,十勝農業試験場のてん菜畑作園芸科ではナガイモのマルチ栽培に対する総合的な施肥改善試験に取り組んでおり,その中の一環として行った緩効性肥料の全量基肥栽培について検討した結果を報告する。
ナガイモのマルチ栽培における緩効性肥料の施用効果を平成11年と12年の2ヶ年にわたり検討した。供試資材には,ナガイモは初期生育が緩慢なうえに栽培期間が150~160日と長い作物であることを考慮して,シグモイド型の溶出パターンを示すスーパーNKロング203-100を選定した。
試験場所は十勝農試圃場(淡色黒ボク土,土性:壌土)であり,供試品種は「十勝選抜系ナガイモ」,窒素施肥量は12.5,15,17.5,20kg/10aの4水準を設定した。リン酸とカリの施肥量はそれぞれ40kg/10aと20kg/10aで各区共通とした。本試験のマルチ栽培では,ナガイモの吸収根が存在する部分はほとんどマルチで覆われるため効率的な分施が困難である。したがって,対照とする速効性肥料(硫安)区でも緩効性肥料肥料区と同様に全量基肥栽培とした。施肥法は全試験区ともに,トレンチャの施工後に通路を除いた幅90cmの畦間に表面施用しており,マルチ内の深さ10cmまでの範囲にしか肥料は混和されていない。耕種概要は表1に,試験圃場の分析結果は表2,3に示した。



平成11年は植付け後の天候が良好であり,萌芽期は平成10年に比べて約1週間早い6月14日となった。萌芽期以降も,気温および日照時間は平年を大きく上回り,ナガイモの初期生育は順調に経過した。植付け後62日目の生育調査では,硫安を窒素成分で20kg/10a施用した区でもナガイモの総窒素吸収量は1.99kg/10aにすぎなかった。植付けた種イモ中にも約1.1kg/10aの窒素が含まれていたことから,植付け後2ヶ月が経過しても,施肥した窒素はナガイモにほとんど利用されていないことがわかる(表4)。

平成12年も11年と同様に植付け後の天候が良好であり,5月下旬~6月上旬の平均気温は平年を大きく上回った。萌芽期は全試験区ともに6月12日となり,植付け後から萌芽期までに要した日数は平成11年よりも3日,平年と比較すると約10日も早まった。植付け後61日目となる7月17日の生育調査結果では,平均の総収量が5000kg/10aを越える記録的な高収年となった平成11年の同時期と比較しても,それよりも高い生育量を示した(表4)。
十勝地域における茎葉最大繁茂期及び窒素最大吸収期となる9月下旬の調査結果を表5に示した。北海道におけるナガイモの窒素標準施肥量である15kg/10aで比較すると,「スーパーNKロング区」の茎葉重及びイモ重は2ヶ年ともには対照とした「硫安区」を上回った。さらに,窒素吸収量についても「スーパーNKロング区」の値は「硫安区」を大きく上回っており,スーパーNKロング203-100は茎葉を極端に繁茂させることもなく,さらに,吸収された窒素は効率よくイモ部に転流していることがわかる。

表6に示した平成11年の結果では,ほとんどの試験区で5000kg/10aを上回っており,十勝管内の平均的な収量である3500kg/10aを大きく上回る収量水準の高い結果となった。「硫安区」及び「スーパーNKロング区」ともに12.5kg/10aではやや窒素が不足する傾向は認められるが,15kg/10a以上での増収効果が低いことを考慮すると,窒素肥沃度の低い十勝農試圃場においてもナガイモに対する窒素施肥量は15~20kg/10aの範囲が適正であるといえる。特に,「スーパーNKロング区」では総収量が高いうえに障害イモの発生も「硫安区」に比べて明らかに少なかったことから,規格内収量でも5000kg/10aを越えており,目標収量である3500kg/10aを大幅に上回った。

表7に示した平成12年の結果でも,各試験区の総収量はおよそ4500~5000kg/10aの範囲となり,収量水準は高かった。両資材ともに12.5kg/10aではやや窒素量が不足したためか,総収量は対照区(硫安5kg区)に対してやや劣った。しかし,「スーパーNKロング区」では窒素施肥量が15kg/10a以上になれば,イモの肥大は良好で障害発生率も少なかった。

マルチ栽培での全量基肥栽培における速効性肥料と緩効性肥料のナガイモの生育に対する効果を比較した。平成11年は「硫安区」に対して「スーパーNKロング区」ではイモの肥大が旺盛であり,障害イモの発生率も少なかった(表6)。施肥量は17.5kg/10aが収量性の点で適当と思われるが,十勝農試圃場の熱抽-N含量が3mg/100g程度であり窒素肥沃度の低い土壌であることを考慮すると,現地農家圃場では15kg/10aでも充分であると思われる。
平成12年の「スーパーNKロング区」は「硫安区」とほぼ同等の収量であるが,「硫安区」では11年と同様に12年にもきわめて障害イモの発生が多かったのに対し,「スーパーNKロング区」の15kg/10a以上の施肥区では10%前後の発生にとどまった(表7)。
平成11年と12年の試験結果を総括したものが図1である。窒素質肥料としてスーパーNKロング203-100を使用することにより,イモの肥大が旺盛になっただけではなく,イモ先端部の障害の発生が減少することにより,規格内率も高まっていることがわかる。イモ先端部の生理障害は「無-N区」での発生が極端に多く,窒素施肥量が増加するにともなって減少することがこれまでの十勝農試における窒素用量試験で確認されている。

本試験においても窒系施肥量が増加すると発生が減少していることと,生育中期以降の肥効が安定しているスーパ一NKロング203-100での発生が少ないことは,イモの肥大が旺盛になる植付け後60日目以降の窒素の不足が障害(写真1)の発生要因である可能性は高い。しかし,イモ先端部の障害の発生には,圃場の排水性や物理性も影響することから,本試験での障害イモの発生が単純に資材の種類や施肥量の影響による栄養生理的なものであると断定することはできない。この課題に関しては,今後も継続するナガイモに対する施肥改善試験の中で検討する予定である。

平成11年と12年の2ヶ年のみの結果ではあるが,十勝農試で行った緩効性肥料試験でのナガイモの生育及び窒素吸収パターンを図2に示した。しかし,両年の総収量の平均は約5000kg/10aという高収量であるため,これまでの十勝管内での平均的な総収量である3500~4000kg/10aを想定すると,図中に示した値は20~30%低く見積もる必要がある。

表4に示したように,窒素を15kg/10a以上施用した場合でも,植付け後60日を経過した時点ではナガイモの総窒素吸収量は2~3kg/10aにすぎなかった。植付けた種イモ中にも約1kg/10aの窒素が含まれていることから,植付け後2ヶ月が経過しても,施肥した窒素はほとんどナガイモに利用されていないことになる。生育はその後旺盛となり,十勝地域では9月下旬頃に茎葉最大繁茂期及び窒素最大吸収期となる。9月下旬の茎葉最大繁茂期以降はイモの充実期であり,イモ重はほとんど増加しないのに対して乾物率は急激に上昇する。この時期は茎葉部とイモ部での養分の競合を避ける必要があり,茎葉部は気温の低下とともに徐々に黄変して,10月下旬にはほぼ全体が枯凋するというのが理想的な生育パターンである。
以上をまとめると十勝地域におけるナガイモの生育及び養分吸収特性は次のようになる。
①植付け後60日目までは種イモの栄養で生長し,ほとんど施肥した肥料分を利用しない。
②60日目~120日目頃の生育はきわめて旺盛であり,ナガイモの平均的な栽培日数である150日間のうち,この60日間(7月下旬~9月下旬頃)でほとんどの生育と養分吸収が行われる。
③120日目以降になるとイモの肥大はほぼ停止するが,茎葉の枯凋にともなうイモへの養分の転流・蓄積が盛んになってイモの乾物率が増加する。
④150日目頃が収穫適期となり,この時の総窒素吸収量は収量にも左右されるが,およそ10~12kg/10aである。
ナガイモでは5000kg/10aを越える高収量であっても窒素吸収量は最大で15kg/10a程度であることから,土壌からの窒素供給量を考慮すると,現在の窒素標準施肥量である15kg/10aは適正な量であるといえる。しかし,栽培期間が長いうえに初期の窒素吸収が緩慢なナガイモの場合は,速効性肥料を用いた基肥重点型の施肥法ではマルチ栽培であっても肥料の溶脱がおこる危険性がある。さらに,マルチを使用した場合は現実には効率的に分施を行うことは困難であることから,緩効性肥料による全量基肥栽培はナガイモ栽培にとって重要な技術であるといえる。
本試験で供試したスーパーNKロング203-100はシグモイド型の窒素溶出パターンを示すことから,ナガイモの生育及び養分吸収特性に適応した資材である。本試験では肥効期間の長い100日タイプを供試したが,平成12年に行った予備試験の結果では70日タイプの収量性が高かったことから,平成13年度には両タイプの資材を供試して,その成果を来年度の北海道農業試験会議に提出する予定である。
1)試験を行った平成11年及び12年はともに高温年であったため,ナガイモの生育は旺盛となり2ヶ年の総収量の平均はほとんどの試験区で5000kg/10aを上回った。
2)マルチの使用を前提としたときの緩効性肥料の全量基肥栽培における窒素施肥量は,北海道の窒素施肥標準量である15kg/10aで安定した高収量を上げることが可能であった。
3)スーパーNKロング203-100は,2ヶ年ともに安定した収量を示し,障害イモの発生も少なかった。このことから,同資材はナガイモの生育及び養分吸収特性に適合した緩効性肥料であり,その実用性はきわめて高いといえる。しかし,初期生育がきわめて旺盛となった平成12年にはやや窒素の肥効が遅れた可能性があり,今後はやや溶出の早いタイプも検討する必要があると思われる。
4)イモ先端部の「コブ」や「リング」等の障害の発生には,圃場下層土の排水性や物理性も影響することから,「硫安区」で障害イモが多発した要因については,今後も施肥試験を重ねる中で解明していく予定である。
ホクレン農業協同組合連合会(JAグループ)
管理本部 役員室
農学博士 関矢 信一郎
大正末から昭和の初めにかけては世界的な不況で米価は暴落した。その結果,米作を中心とする我国の農民の困窮は著しく,小作争議が頻発した。この中においても稲作生産費中の肥料費は3割~3割5分と高く,この引き下げが急務とされた。帝国議会もこの問題を取り上げ,昭和2年肥料問題調査会が設置された。この調査会の答申に基づき昭和5年以降,臨時肥料配給法などが次々と制定された。これらによって肥料の需給については政府が調整すると共に,硫安生産の増強,自給肥料の増産などが助成された。
硫安の生産はその後急上昇し,昭和7年には80%が自給され,10年代にはほぼ100%の自給が可能となった。それより先の昭和3年には,硫安の生産は大豆粕の輸入量を上まわり,価格も大豆粕の3分の1程度となったが,大豆粕の施用は続き,農林省は有機質肥料と無機質肥料の肥効比較のため,全国に指定試験地を設けた。
日中開戦後の昭和12年,肥料配給統制法が制定され化学肥料の統制が強まった。昭和13年から肥料が割当制になった。以降10年間の割当量を表1に示した。窒素は第二次大戦が始まった16年から急速に低下し,20年代には12年の3分の1となった。燐酸は更にきびしく,16年で2分の1,18年以降は実質的に皆無となった。

しかし,この中で水稲の反収は,冷害年だった昭和20年を除けば,殆んど低下していない。これは水田の養分天然供給能の大きさを示すと共に,すでに述べた自給肥料増産の結果とみることができよう。
農林省は昭和4年及び8年,各県の施肥実態を調査している。この両年の報告と昭和15年の各県施肥標準について,それぞれ黒川氏が取りまとめた資料に基づき,本田肥料の種類,施用量などを表2,3,4に整理した。
まず,この時期に本田肥料として使用されていたのは(表2),昭和4年では自給肥料として殆んどの地域で堆肥が,約4割で緑肥が使われ,下肥や草木灰も施用されている。一方,販売肥料では,大豆粕などの植物油粕が4分の3の地域で,鰊粕などの魚肥が4分の1の地域で使われており,無機質としては過石が殆んどの地域で,硫安は4分の1で施用されている。他に,硫加,石灰窒素,石灰の施用もある。

追肥としては,油粕,魚肥,硫安,過石,硫加などの販売肥料が主であるが,下肥や草木灰も使われている。
施用量は全国128地域の平均で(表3),N-P2O5-K2Oの成分で2.4-2.1-1.7貫1反,このうち販売肥料の割合は,それぞれ44-71-26(%)である。燐酸が高く,加里は少ない。施用量を県別にみると,北海道は少なく,長野で多い。また,販売肥料では鹿児島で少なく,新潟で多くなっている。

昭和8年における使用肥料は自給では堆肥,緑肥が主であるが,下肥・草木灰を含めた使用割合が4年に比べ増加している。販売肥料では,魚肥以外の有機質肥料は減り,無機質は増えて,配合が14%となっている。
追肥では殆んどが横ばいとなり,ここでも有機質が減り,無機質が増える傾向が認められる。
施用量については数値を省略したが,自給・販売の双方共,殆んどの県でマイナスになっている。この4年間で,窒素肥料では大豆粕が安い硫安に移行しているが,全量は減少している。
昭和15年の各県(10府県)の施肥設計で使用された肥料の種類を昭和8年との比較でみると(表2),自給肥料では堆肥は90%と高いが緑肥は14%で減少している。また,草木灰は46%と高くなり,下肥も増えている。販売肥料では,油粕,魚肥が滅り硫安・配合が増え,その分過石・硫加は減っている。
追肥が全体に減少しているのは後述する調査母体の関係もあると思われる。
施用量は表4に示す様に平均でN-P2O5-K2Oが2.59-1.46-1.95貫1反,その内販売肥料の割合は46-15-13%である。施用量を昭和4年に比べると窒素はほぼ同じ,燐酸は25%減,加里は10%増となっている。販売肥料の割合も窒素以外はむしろ低下している。

昭和4年及び8年の調査は農家の慣行,15年は施肥標準からの推定値で出所がやや異なるので単純な比較はできないがいくつかの傾向を読みとることはできる。
硫安はほぼ自給され,価格が低下したための使用量が増えた。一方,明治以来使用されていた過石は肥効が明らかでない,配給が少なくなったことなどから施用量が減っている。加里は元々販売肥料への依存度が低かった。全体的にみても農家が販売肥料費を抑制し,一方で自給肥料増産に努めたことが伺われ,施策の効果が現れたと見ることができよう。
以下にいくつかの例を上げる(昭和15年施肥標準)
○青森(北津軽)-堆肥300貫1反(以下同じ),硫安1,石灰窒素1.8,過石0.5,配合(硫安,大豆粕,過石),で成分の合計は2.9-1.5-1.5となり,表4よりかなり多い。
○栃木(県北)-堆肥300,大豆粕4.8,魚肥3.3,硫安2.9,過石4.4,成分合計,2.67-1.69-1.60
○新潟(中蒲原)-堆肥200,大豆粕7,硫安6,過石8.5,塩加1.2,草木灰6,石灰10,成分合計2.67-1.96-2.07
○愛知(平坦,二毛作)-堆肥200,大豆粕6,硫安1,配合(硫安・過石・大豆粕,鰊粕)15,草木灰15,石灰10,成分合計2.8-1.6-1.95(内追肥,配合8,硫安1,大豆粕6)
○京都(山城平坦)-堆肥280,大豆粕12,硫安4.2,草木灰12,成分合計3.0-1.0-2.2(内追肥大豆粕6,硫安1.7,草木灰12)
○広島(中部)-堆肥300,硫安3,過石2,下肥100,草木灰10,成分合計,2.67-1.32-2.32,(内追肥 下肥100,草木灰10)追肥の下肥と草木灰は県内の他の事例とも共通している。
○福岡(遠賀川・沖積)-堆肥200,青刈大豆200,硫安4,過石2.5,草木灰,石灰10,成分合計2.96-1.16-2.90(内追肥 硫安20)
稲作における追肥は江戸時代から行なわれており,例えば元禄期の農書には一番草の後に「下肥や魚粕を引育する」などと見える。この頃は草肥などが元肥の中心で分けつ促進の効果を求めたものであろう。
明治になってもほぼ同様で,魚肥や下肥が用いられている。しかし,明治中期の稲作技術書,例えば米作改良法(明治20年)では,遅い時期の追肥は生育遅延を招くこと,イモチ病に罹りやすいことなどから全体に消極的である。
断片的であるが,明治10年頃の追肥の例を挙げる。
元肥の半量を一番草の後に(神奈川)。下肥・乾鰯・油粕(新潟)。乾鰯末5貫1反(静岡)。3番除草の後(京都)。6月下旬~7月上旬,油粕(広島)。
収量水準が向上し,肥料の要求量が増加する一方で,速効性の販売肥料が出まわる中では,当然追肥が必要となって来る。大正期の慣行調査によると,西南暖地を中心に広く追肥が行なわれている。この頃には硫安・過石なども使われている。
昭和初期の事例調査で,追肥慣行のある地域を表5にまとめた。東北寒冷地と西南暖地の差が明らかに認められる。昭和8年の調査によると,新潟以南の各県では殆んどの地域で追肥が行なわれ,販売肥料の3分の1から2分の1に達している。肥料としては,硫安・過石が多く,過石の追肥が注目される。その他魚肥も使われている。昭和15年の施肥標準では下肥や草木灰の施用が再び増えている(表2)。これは,自給肥料の奨励の結果と思われる。

硫安が安く出廻る様になると追肥の時期が問題となった。山形県の田中氏が穂ばらみ期追肥を提案し,山形農試も数年の検討の結果,昭和15年,最高分けつ期直後の出穂25日前の追肥法(施肥)を確立した。これは,大戦中を通じ普及していくことになる。
収量水準が更に上り,窒素施用量が増えると全量元肥では過繁茂のおそれが生じる。ここに分施が必要となり,後に水稲の後期栄養の重要性が認識されると迫肥を含め施肥法全体の見通しがなされる。この点については後述する。
先に述べた様に水稲の追肥には”南高北低”とも云える傾向が認められた。北日本では幼形期頃の稲体の窒素含有率が高いと低温障害のおそれがあり,一方南日本では生育後期の窒素不足による秋落ち的症状が発生することが根底にあるが,この点についても後述する。
石川県農業総合研究センター 育種栽培部
花き科長 西山 哲
石川県農林水産部 農産課 普及研究係
主任技師 吉住 隆司
(前 石川県農業総合研究センター 育種栽培部 花き科)
藩政時代において江戸,京,大坂に次ぐ大都市であった金沢市は,「加賀は天下の書府」といわれた文化都市の伝統を受け継ぎ,現在でも地方都市の中では花の消費が多いところである。
石川県内には金沢の街を出荷の主たる対象とした花き産地が古くから点在していたが,全県的にみると花きの生産は小さいものであった。このため,県では,身近にある大きい消費市場・金沢を活かして花きの生産を拡大する一環として,栽培が比較的容易な小ギクに注目し,加賀から能登にいたる各地で新しい小ギク産地を育ててきた。
しかし,これら新産地での小ギク栽培は8月の旧盆向けに偏りがちであり,小ギクの単価は旧盆の前と後で単価の変動が大きく,旧盆直前にうまく開花させられるかどうかは経営上の大きな課題である。
一方,県内産のこの時期の小ギクは殆どが露地栽培である。経験の浅い生産者が,毎年変化する気象条件の下で露地栽培の小ギクを希望する期日に開花させることは大変難しい。同じ品種を同じ時期に定植しても開花時期は年により異なってくる。時には品種の早晩性が逆転する事例もみられる(表1)。このような状況に対処するため,各産地では定植期をずらしたり,品種選定に工夫をこらすなど,旧盆前に安定して出荷できるよう努力を続けている。

石川県農業総合研究センターでは,このような状況を踏まえ,新しい産地や経験の浅い生産者でも,その年の開花の早晩を簡便に予測して,それに対応した開花調節技術が使えるよう,その根底となる開花期予測技術の開発に平成8年度から取り組んできた。
開花期を予測する手法としては,主に稲や麦を対象に農林水産省で開発・提案された「ノンパラメトリック法」に注目した。
ノンパラメトリック法は,作物の生育過程は発育速度(DVR)と発育指数(DVI)で表されるという考え方に基づくものである。
小ギクを例にとると,小ギクは定植・摘心から日々発育を重ねて開花・収穫に至る。この日々の発育量を数値で表したものが発育速度(DVR)である。また,ある基準日(例えば摘心日)から目的とする日まで毎日の発育速度を順次積算したものが,目的日の発育指数(DVI)である。
すなわち,
目的日のDVI = 前日のDVI + 目的日のDVR
と表すことができる。
一般に基準日のDVI=0,目的とする日のDVI=1とするので,小ギクの開花期予測については摘心日(基準日)のDVI=0,開花・収穫日(目的日)のDVI=1とすると,図1のように表現できる。

摘心した日がわかっている小ギクについて,DVI=1となる日を計算して開花日を予測するには,発育速度DVRを知る必要がある。
小ギクの摘心日から開花日までの日数は,同一品種であっても栽培年により,また摘心時期により異なってくる。これはそれぞれの作期の環境要因の経過が異なるためである。しかし,一日一日の発育量(発育速度)は,同じ条件の日であれば同じ値をとり,条件のわずかな変化では発育速度に大きな差は生じないはずである。仮に発育速度を日平均気温だけで表すことができるとすれば,気温20℃のDVRはどのような栽培方法でも同じであり,また20℃と21℃とでは大差がない,ということになる。
このような仮定のもとで,生育期間とその期間における環境要因,例えば気温の推移のデータを何組か調べ,いずれの組にも概ね当てはまるDVR関数を算出する。
稲や果実の成熟期を推定するためには積算温度法が用いられることが多い。積算温度法とは気温と生育速度が直線関係にあるとしてDVR関数を算出する方法である。これに対してノンパラメトリック法は,環境要因と生育速度の関係として直線などの特定のもの(パラメーター)をあらかじめ想定せず(ノン)に,前記の仮定のもとにノンパラメトリック平滑化法という手法を用いてDVR関数を作成するものである。実際にDVRを算出するにあたっては,農林水産省農業研究センターで開発されたプログラムによった。
はじめに,発育速度DVRを求めるために必要な小ギクの生育データと,DVRがどの環境要因の関数として表されるかを特定するためのデータを揃えることとした。
平成8年から3年間にわたり各3作期の小ギクを栽培し,9作期の摘心日とそれに対応する開花日を記録した。また,環境要因については、キクの花芽分化・発達には一般に気温と日長が関わっているとされることから,栽培期間の気温も計測した。日長については金沢における天文日長を用いた。
これらのデータをもとに,予測に用いる気象要因を毎日の平均気温のみ,最低気温のみ,平均気温と日長,最低気温と日長の4通りでそれぞれDVR関数を作成した。
このDVR関数が妥当なものかどうかを判断するため,各作期について環境要因の日々の実測値に対応するDVR値を求め,摘心日以降順次積算することで生育指数DVIを算出した。DVIが1を始めて超えた日を予測開花日とした(図2)。この予測開花日を実際の開花日と比較したところ,平均気温のみを要因として用いた場合に両者の差が3~4日と最も小さくなった(表2)。


DVR関数の作成は’花エクボ’’あさつゆ’’星の友’の3品種で行ったが,いずれの品種でも同様の結果を示したことから,8月咲き小ギクについては一般的に,日平均気温によるDVRを用いて開花期の予測ができるものと考えられる。なお,品種によりDVR関数の形は異なっていた。’あさつゆ’では24℃前後で発育速度が大きく15℃から20℃の間の勾配が大きい尖った形であるのに対し,’花エクボ’では20~25℃の発育速度は大きいもののその前後での勾配は小さい緩やかな山型となった(図3)。このように,DVR関数については品種ごとに算出する必要がある。

県内に散在する小ギク産地では,産地ごとに様々な栽培方法が採用されている。今回のDVR関数は農業総合研究センター(以下「農研」)で栽培されたデータのみを使って作成したものである。このDVR関数は,摘心日と摘心日以降の日平均気温のデータさえあれば,農研だけでなく県内いずれの産地でも,どのような栽培方法をとった場合でも適用できるかどうかについて検討した。
農研のほか加賀市,金沢市,羽昨市及び柳田村の県内4産地の生産者の圃場で摘心日と開花日およびその間の気温の経過を調査した。その結果,いずれの産地においても,実際の開花日と計算した予測開花日との差が0.3~5.4日の範囲にあり,概ね十分な精度が得られた(表3)。この試験ではマルチ使用の有無,施肥方法,育苗方法等は統一せず異なるままとしており,栽培方法,栽培地域によらずこの予測方法が適用できることが示された。

また,現地圃場で計測した気温データに代えて近隣のアメダスデータを用いて計算した場合でも予測誤差が0.9~5.6日となり,実測値を用いた場合と同程度の精度が得られた。従って,必ずしも場所ごとに気温計測しなくとも,アメダスデータを用いることで手軽に予測ができることになる。
これまでの結果は,開花期までの実際の気温データを入力して得たものである。本来の目的である予測に用いる場合には,予測を実施する前日分までは実測値を入力することができるが,それ以後の気温は推測値を用いなければならない。実際には平年値を用意しておき,平年値をそのまま用いるか,高めあるいは低めの気温推移が見込まれる場合は平年値に数度分を加えたり,あるいは差し引いたりした値を用いる等の応用をすればよいことになる。
開花期予測方法の使い道としては,これまでに,①各地での作型開発の支援,②開花調節処理時期の判断,の二つに取り組んできた。
摘心日を起点に開花日を計算するだけでなく,目標開花時期を設定し,DVI=1から日平均気温に基づくDVRを引き算し続けてDVI=0となる日を逆算して摘心日を算出することができる。
日平均気温の値として各産地毎の平年値を用いれば,目標開花期に対する産地毎の最適摘心日が求められる(表4)。これまで各地で経験的に定められてきた摘心時期に根拠を与えることができるし,有望な品種についてこれを算出しておけば,産地にとって新しい品種を導入する際の試行錯誤の回数を減らすことができるようになる。

また,一定期間連続して出荷期を設定する場合には出荷期間に対応して摘心時期をずらして設定することもできる。このようにして作成された作型表に基づいて作業をすすめれば,より的確な計画出荷が実現できるものと期待される。
8月咲き小ギクの開花調節技術としては,エスレル散布による開花遅延が用いられている。栽培指針ではエスレル処理の時期は摘心時とされており,摘心の時点で当年の開花の早晩を判断しなければならない。実際にはエスレル処理の有無や回数を違わせた数種類の圃場を設け,危険分散が図られている。
エスレル処理するか否かの判断は,処理が遅くなることで発生する障害が無い限りは,できるだけ遅くできるほうがよい。そこで,摘心後に間隔をおいてエスレル処理を行い,処理の効果と得られる切り花の品質から,どの時点までエスレル処理を遅らせることができるかを検討した。その結果,限界時期は摘心後の日数ではなく,発育指数DVIを指標とすることが妥当であり,’あさつゆ’の場合DVI=0.22がその時期であると推察された。
DVIが0.22に達する日数はその年の気温経過により摘心後3週間~5週間程度までの幅がある。したがって,摘心3週間後頃から,それまでの日平均気温値を用いてDVI値を順次算出して行き,0.22に近づいた時点でエスレル処理の要否を判断すればよいことになる。
今年度は小ギク産地を管内に持つ農林総合事務所と連携し,今後普及を図りたい品種について発育速度を算出するとともに,産地毎の作型表を作成することとしている。
また,研究機関で小ギクの開花予測方法とその活用例を示すことはできたが,普及員や営農指導員がこの方法を使いこなせるようになって始めて研究の目的が達せられるものであり,様々な活用方途を具体化することが今後の課題である。これは研究成果の伝達の問題であり,研究員が普及員とともに現地での使い勝手をみながら修正していくことで実現できるものと考えている。